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【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ5【友人・知人】

1 :本当にあった怖い名無し:2008/08/19(火) 21:06:09 ID:3CK9TmjL0
シリーズ物、霊感の強い人にまつわる話を集めるスレです。
考察や、好きな話について語り合いましょう。

・投下歓迎。実話、創作不問。新作も歓迎。
・作品投稿者はトリップ(名前欄に#任意の文字列)推奨。
・話を投下する際はなるべくまとめてから投下しましょう
・sage進行、荒らし煽りはスルーでお願いします。
・他スレへの迷惑が掛かるような過度の勧誘やはご遠慮下さい。


2chオカ板シリーズ物総合倉庫        まとめサイトその2
http://occult.nobody.jp/           http://www35.tok2.com/home/ganbanbee/index.html

洒落コワ投稿掲示板(煽りは嫌、洒落コワまとめに載りたい!と言う人はこちらへ)
http://jbbs.livedoor.jp/study/9405/

前スレ
http://hobby11.2ch.net/test/read.cgi/occult/1216318669/

432 :本当にあった怖い名無し:2008/09/10(水) 19:31:14 ID:maU0Qocd0
>>430
うぁ、すまん。
個人的に建御雷が好きでね・・・熱くなってしまった。

433 :本当にあった怖い名無し:2008/09/10(水) 19:46:27 ID:exeE5vdq0
>>431
いえいえ。お気になさらず。

議論はそれなりに大切とも思うのだ。読む方もなかなか面白いです。
ただ、「宗教観」(というのかな?)の違いとか考え方の違い、或いは出典の表現の
受け取り方次第で変わってしまうので、ここで検証してると教授その他書き手さんが
書き込みにくくなるかもしれんとちょっと思ったので。

オカ板だと書き手本人が書き込むときIDなどで解ってしまうとまた荒らしを呼び込みそうなので
よければ難民とかにでも検証スレ立てるけど、実際検証とか議論したい人いる?
需要があればやっておきます。

そこまで必要ねえ、が大半な感じもするけどどうでしょう。

434 :本当にあった怖い名無し:2008/09/10(水) 20:30:27 ID:4iTG97u9O
検証するまでもない、ってのが正直なところか。
有名な場所だし自分で調べればすぐわかる。
鵜呑みにするのもまた一興。



まあ乙だったぜ教授。

435 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/10(水) 23:45:47 ID:r4RP7Qy80
>>424
指摘されて気がついた(汗)。【派生】は確かに間違ってるわ。
【色濃く影響を受けた】に脳内変換してくれると助かります。

>>432
そっか。ファンか…。
それはまことにスマンカッタ

>>423
いえ、全然(笑)。

スレチなレス、ごめん。

436 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 09:33:59 ID:ypIINElh0
[連鎖]
1/9
すっかりハマッテしまった。
いつでも考えてしまう。まるで乙女だな、と思う。
俺は読んでいたオカルト系雑誌を脇にどけ、携帯を取り出し、考える。
メールをするか、電話をするか・・・。ここは慎重に事を運びたい。

ハマッタのはオカルトの世界に、という訳ではない。
まぁそれにも大分のめり込んでいるのだが・・・。
すっかり惚れてしまったのだ。彼女に。
オカルト系雑誌なんかを読むようになったのも、彼女の趣味がそれだからだ。

相手の趣味に合わせて、その勉強?をするなんて、なんて健気なのだろう。
・・・とかなんとか自分に酔っていると、持っている携帯がいきなり鳴った。

慌てて確認し、驚く。・・・彼女からだ!
なんという奇跡。思いが通じたのか?
おぉ、神様、仏様、阿弥陀如来様。
えーっとあと、インドラ様に薬師如来様。刺抜き地蔵様も入れておこうか。


437 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 09:36:20 ID:ypIINElh0
2/9
とりあえず思いついた有難そうなものに感謝して、俺は電話に出た。
俺「はい、北上です」
携帯なのに思わず名乗ってしまった。
声「あー、北上。神尾だけど。今、ちょっといい?」
ちょっとじゃなくて、いくらでもいい。なんて軽口を言いそうになったが、
止めておいた。あぁ、俺、本気なんだな、と思う。
そしてなぜか正座していることに気付く。

俺「おう、平気平気。丁度暇してたとこだ」
神尾「ちょっと、お願いがあるんだけど・・・」

お願い・・・。お願いだって?
彼女が、俺にお願いしたいことがあるって?
これは夢なのか?俺は仁王様と恵比寿様に感謝した。
俺「な、何?」
神尾「あのさ、―――・・・」


438 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 09:40:16 ID:ypIINElh0
3/9
その日の夜。
俺は雨月と一緒に神尾さんの家に来ていた。
家には既に鮎川さんが来ており、以前行った肝試しメンバーが集まったことになる。

神尾さんの部屋は1Kのよくあるタイプ。
綺麗に片付いており、4人集まっても狭さを感じない。
そして物凄くいい香りがするのは、気のせいではないだろう。
さすが俺の天使の部屋だ。うん。俺、キモイな。

しかしこんな急展開があるなんて。さすが恵比寿様だ。
それと、俺は雨月にも感謝した。やはり持つべきものは友だ。
というのも、神尾さんのお願いはこうだった。
「古乃羽が雨月くんに興味があるみたいだから、連れてきて」

こんなやつでよかったら、どこにでも連れて行く。
しかし、鮎川さんが雨月を、ねぇ・・・。上手くいけばいいが、俺は一抹の不安を感じる。
なにしろ、雨月は・・・姉好きだ。
それに対して鮎川さんは、どちらかというと妹属性だろう。
これは中々難しそうにも思える。


439 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 09:45:26 ID:ypIINElh0
4/9
しかし、確か雨月の姉好きは、姉を守りたい一心から来ているようなことを、以前聞いた覚えがある。
詳しくは教えてくれなかったが、病気をしていたからだとかなんとか。
よって、鮎川さんのように見るからに守りたくなるような女の子なら、
望みはあるだろう、なんてのが俺の考えだ。

集まった表向きの目的は、みんなで鍋でも囲んで・・・オカルト話でもしよう、というものだった。
9月終わりのこの季節、鍋はまだ早い気もしたが、
人が集まって食べるものと言えば、鍋でしょう、と神尾さんが言っていた。無論、異議なし。
オカルト話ってのもどうなんだろう、と一瞬、ほんの一瞬だけ思ったが、鮎川さんの得意分野ってことで、これも異議なし。
間違いなく、俺は尻に敷かれるタイプだろうな。まぁ、それでもいいか。


4人が集まったところで、早速鍋を囲む。神尾さんと鮎川さんで作ったらしいが、
鮎川さん曰く、「美加は食器並べていただけでしょ」と言う。
鮎川さんは他の3人に配膳をしてくれる。これは雨月にとってもポイントが高いだろう。
一方、神尾さんは男2人と同様、食べるだけの係り。いいのさ。俺はそんな神尾さんに惹かれるんだ。


440 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 09:53:07 ID:ypIINElh0
5/9
食事も終わり、だいぶ打ち解けてきたところで、神尾さんが、ちょっとオカルトな話があるという。
神尾「バイト先の先輩に聞いた話なんだけどね。ほら、先日××区で通り魔事件あったでしょ?」
確か、仕事帰りのサラリーマンがナイフで刺されて死亡した事件だ。
通り魔の犯行、ということで、犯人が捕まったという話はまだ聞いていない。

神尾「その事件の前から、同じ区とか、近辺の区で同様の事件が起きているのは知っているよね?どれも犯人は捕まっていないの。
これらの事件には共通してることがあって、どの事件も、現場に犯行に使ったナイフが残されているの。
で、そのナイフには犯人のものと思われる指紋がくっきり残っていて、
どれも違う指紋だから、犯人はそれぞれ違う人物だ、って言われているわ」
そうなのだ。
そういった事件だと、犯人が同一の人物である、と報道されると、不謹慎だが少しホッとする。
全て犯人が異なっているとしたら、それだけ危険人物が多いからだ。
でも今回はまさにそれで、まったく物騒な話だ。

神尾「でもね、その指紋の話なんだけど、おかしなことがあったんだって」


441 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 09:58:43 ID:ypIINElh0
6/9
神尾「この前の事件と合わせて、あの地域だと4件も通り魔事件が起きていて、
それぞれの被害者を、古いほうから順にA、B、C、Dさんとするね。
で、この前のDさんの事件現場に残されていたナイフの指紋を照合したら、
一致する人が見つかったらしいの」
俺「あ、じゃあ犯人は特定できたんだ」
神尾「うん、でもそれがね、Cさんの指紋だったらしいの」
俺「ん・・・?」

神尾「でね、それに気付いた人が、なんとなく他のナイフも調べてみたんだって。
そうしたら、Cさんを刺したナイフにはBさんの、Bさんを刺したナイフにはAさんの指紋があったの」

オカルトだ。なるほど、これはオカルトな話だ。
鮎川「それ、逆じゃないの?逆なら話は分かるのだけど・・・」
確かに逆ならありえる。AさんをBさんが刺し、そのBさんをCさんが刺し・・・ならば。
神尾「私も確認したのだけど、違うんだって。
指紋だけ見ると、DさんをCさんが刺し、CさんがBさんを、BさんをAさんが刺したことになるのよ」


442 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 10:03:35 ID:ypIINElh0
7/9
雨月「なんか、不気味な話だね・・・」
俺「本当なのかな・・・それ。ニュースでも言ってないし、そもそも指紋のことなんて、その先輩が何で知っているんだろ」
神尾「うーん、それは私も思ったのだけど、先輩の知り合いで警察の関係者がいて、その人から聞いた、って言っていたよ」
眉唾ものだが・・・まぁ、そこら辺を突っ込むのは無粋ってもんだ。

鮎川「それだとさ。じゃあ、Aさんを刺したナイフの指紋の主は誰なのかな?」
鮎川さんが疑問を投げかける。
雨月「なんか、話の感じだと・・・Dさん、とか?」
神尾「それも聞いてみた。Dさんなの?って。でも違うって。それは誰だか、まだ分からないみたい」

雨月「なんか、奇妙な連鎖が起きているとしたら、始まりはどこなのか、って大事だよね」
鮎川「そう、連鎖、よね。殺された人の怨みが、次の人を殺しているような感じ・・・」
俺「じゃあ、次はDさんの指紋がついたナイフが、誰かを・・・?」
Dさんの怨みが篭ったナイフが次の犠牲者を求めて彷徨う絵が頭に浮かび、ゾッとした。


443 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 10:09:23 ID:ypIINElh0
8/9
雨月「あのさ、ナイフって、全部同じ型だったりするのかな」
雨月が神尾さんに質問する。
神尾「違うみたい」
雨月「被害者の、刺された箇所とかは・・・知っている?」
神尾「えーっと・・・、Dさんはお腹に数ヶ所と、頸部だっけ。あとは知らないや。調べれば分かると思うけど」
俺「気になることでもあるのか?」
雨月「いや…ただ何となく。何か他の共通項はあるのかな、ってさ」
神尾「警察も調べているだろうけど、被害者同士の接点とか、ほとんど無いみたいね」
雨月「そっかぁ・・・」

俺「なんにせよ、物騒な事件だよな。神尾さんも鮎川さんも、気をつけてな」
神尾「親にも言われたわ。夜道の一人歩きはしばらくしないように、って」
鮎川「私も実家から電話掛かってきたな・・・」

その後は、それぞれの実家の話やらで時間が過ぎ、その会はお開きになった。

鮎川さんは神尾さんの家に泊まるらしく、俺たち男2人はそれぞれ家路についた。
もちろん、またどこか遊びに行こう、という約束を取り付けてからの帰宅だ。


444 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 10:13:14 ID:ypIINElh0
9/9
家に帰った俺は、先ほど話題になった事件のことを少し考えてみた。
指紋のことは確かに驚きだが、100%ありえないことではない。
何らかの形で、生前に触ったナイフが使われた、というだけのことだ。
まぁ、0.1%くらいはありえる・・・かな?

俺「ナイフか・・・」
Dの指紋が付いたナイフ。今はどこかに落ちているのか、それとも誰かの手の内にあるのか。

もしも・・・と思う。
霊感のまったく無い(と思う)俺と違って、雨月だったら、
そんな怪しいナイフに遭遇した場合、何か助かる術があるのかもしれない。
鮎川さんもそうだ。彼女も廃校で何かを見た人だ。彼女も霊感持ちなのだろうか。
神尾さんは?違うだろうな。違っていて欲しい。俺と一緒であって欲しいと思う。

この4人の中で、俺と神尾さんは何も見れないし、感じることもできない。
そう思うと不安になる。ドラマや映画だと・・・真っ先に災難に遭うキャラだ。
主人公は雨月と鮎川さんの二人。

俺「ハァ・・・」
だったら、自分の身は自分で守らなければならない。
彼女・・・神尾さんも守ってやらなければ。

新たな決意に燃えた俺は、取り敢えず筋トレから始めたのだった。


445 :本当にあった怖い名無し:2008/09/11(木) 10:26:22 ID:Zf/BtvQm0
[連鎖]、乙。
シチュエーションが面白いですね。

>>444
最後の1行は笑いましたww

446 :本当にあった怖い名無し:2008/09/11(木) 13:07:41 ID:s3eme7Gk0
赤緑来てたー。
いつも楽しみにしてるよ。
でも、本格的にラノベになってきたな…。
まぁ、好きだけど。

447 :本当にあった怖い名無し:2008/09/11(木) 13:50:39 ID:sTUBi0uaO
同意
なんかモロに厨設定過ぎて…正直オレはもういいや
目に見えて劣化していくっていう、最近じゃ珍しいパターンだな

448 :本当にあった怖い名無し:2008/09/11(木) 14:56:41 ID:dVUfeau80
ウニさんと教授待ち。

449 :本当にあった怖い名無し:2008/09/11(木) 16:34:35 ID:s3eme7Gk0
勝手に同意してこき下ろされても…。

個人的な妄想だが、
雨月→鮎川→北上→神尾→(雨月姉?)→
と続いて、最終的には一軒家の悪霊と繋がるのではとwktkしてる。
赤緑もここに書いた作品を「赤緑シリーズにまとめた方が…」って言ってるし。
たぶん北上パートはライト色が強いんじゃね?

しまった、完全に俺はファンになっているorz

450 :本当にあった怖い名無し:2008/09/11(木) 16:35:41 ID:Mvef1j1E0
そっか?
どう最初に繋がるか興味深いよ。

451 :本当にあった怖い名無し:2008/09/11(木) 16:36:57 ID:Mvef1j1E0
ごめん、450は447へのレス。

449のように私も期待してるのでガンバレ。

452 :本当にあった怖い名無し:2008/09/11(木) 17:11:46 ID:4znEjzUqO
赤緑乙

453 :本当にあった怖い名無し:2008/09/11(木) 18:58:41 ID:bjAeDMQ1O
鮎川に期待

454 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/11(木) 23:53:44 ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 1/9

長い話ばかりで恐縮しているのと、兄貴編を書いてみたくなったので、サイドストーリーを投下します。
教授は出ません。郷土史もありません(汗)。

運動系は得意なほうだったけど、特に頭が良かったわけでも、経歴のスペックがあったわけでもない。
なのに、中学、高校と、つけられたあだ名は【アニキ】だった。同級生からも、なぜか上級生からも。
当時、まだ小学生だった妹は、最初は可愛く、
「お兄ちゃん」
と呼んでくれていたんだけど、俺の悪友たちに感化されて、すぐに、
「ダメ兄貴」
が代名詞の定番になった(泣)。

そんな時代の話。

455 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/11(木) 23:54:32 ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 2/9

俺の一学年上に、名高、という先輩がいた。
高校時、俺は陸上部と心理学研究会という眉唾なクラブに所属してた。名高先輩は、その陸上部のほうで世話になった人だ。
おとなしくて気弱な性格だったけど、考えなしに行動する俺を絶妙にサポートしてくれたりして、意外と頼りになる先輩だった。
そして、足は抜群に速かった。

名高さんが3年に進み、クラブにも出てこなくなって疎遠になった頃、妙な噂を聞いた。
「受験ノイローゼらしいよ」
彼は、見るからに厳しい家で育てられてるといった内向的な雰囲気を持っていたから、プレッシャーがきついことは、簡単に想像ができた。

気になって、話を聞きにクラスまで行ったこともあったけど、要らん世話を焼く周囲に、
「あんまり関わらないほうがいいんじゃない?」
と押しとどめられて、結局、声をかけることもなく放置してしまった。

456 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/11(木) 23:55:05 ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 3/9

もう肌寒かった10月の半ば。
深夜まで漫画読んで遊びほうけていた俺は、なんとなく視線を感じて、2階の部屋の窓から眼下を覗いた。
名高先輩が立ってた。影が異様に薄かった。
俺はすぐに玄関を飛び出して、先輩が立っていた位置に行った。
けど、もう痕跡はない。

先輩の存在が消滅するイメージが繰り返し浮かんだ。
焦ってあちこちを探すと、俺の家から一区画目にある信号の交差点を、左に折れる影が見えた。
家のほうから、お袋の呼び止める声が聞こえたので、
「すぐ帰るからっ!」
と返事をして、俺は先輩を追った。

457 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/11(木) 23:55:56 ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 4/9

尻尾を捕まえる、という言葉があるけれど、まさにそんな感じで、俺は、先輩の影という尻尾を追った。
もうちょっと真面目に走りこんどきゃ良かった。全然追いつけねえ。
汗だくになりながら着いた先は、学校だった。
寒気がするほどの不安が襲ってくる。
息は完全に上がっていたけど、頭は冷静になれた。冷静にならないと【間に合わない】と思ったから。
校門をよじ登って、校庭に忍び込む。

闇に包まれた校舎は不気味で、ガキだった俺は、足がすくんだ。
先輩の影はどこにもない。学校に入ったのかどうかも定かじゃない。
でもさあ。
真夜中に、音信の途絶えてる俺の家に来るぐらいなんだぜ?よっぽど思いつめてなきゃ、やらないよな。
ノイローゼの人間が、最期の場に選ぶのは、自宅か学校ぐらいじゃないのかよ。

鍵がかかっているだろう昇降口を避けて、俺は、教室棟の脇にある、螺旋状の非常階段を上り始めた。

458 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/11(木) 23:56:55 ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 5/9

階段は、安全基準なんか気にも留めないという造りで、中央部は、最上階から地面まで吹き抜けている。
腰までの手すりはついているけど、そんなもんは簡単に越えられる。
先輩…、まさか、上から降ってこねえだろうなあ(汗)。
振り仰いでも、上部は、鉄階段の底に阻まれて見えなかった。

4階部分に到達して、いよいよ最上階の5階に着こうとしていた俺は、落ちてくる先輩を受け止めるイメージトレーニングに集中していた。
だってな、この先は屋上に到達するしか道がない。俺が無駄足を踏んでいるんじゃなかったら、先輩は屋上か、階段の上部にいるはず。
螺旋の上から、ひょいっと先輩の顔が覗きそうな気がした。
「…俺、来てますよ…」
思いとどまってほしくて、ビビリながらも声をかけた。

459 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/11(木) 23:57:30 ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 6/9

そしたらさ。おかしいんだよ。
螺旋階段の下のほうから、カンカンと金属を踏み鳴らすような足音が聞こえてきたんだ。
吹き抜け部分に顔を出して確かめると、3階辺りに足が見えた。
な…なんで先輩のほうが下にいるんだよ?!抜いてきたわけもないのに…。

足は下方に向かっている。
俺も方向転換をして、足を追った。
相変わらず早い。距離を離される。
焦る。なぜかわからないけど、思う。
【あの足が地面に下りる前に捕まえないと】

460 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/11(木) 23:58:17 ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 7/9

俺が2階あたりまで下りたとき、先輩は、すでに地上まで数段を残すのみだった。
俺は何も考えずに手すりを越え、吹き抜け部分から下に飛び降りた。

地面までは長かった…。

足裏と足首と膝に、思いがけない衝撃を感じて、悲鳴が出た。
でも、うずくまる前に、階段の出口を塞ぐことができた。
あと1段を残して地面に下りきらなかった先輩は、驚いた顔をして、足を止めた。

その瞬間、すぐ脇の植樹の並木から、盛大な音がして。
屋上から飛び降りたらしい先輩の体が、小枝まみれになりながら俺の目の前に落ちてきた。

461 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/11(木) 23:59:05 ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 8/9

携帯を常備する時代じゃなかったから、救急車を呼んでくれたのは、俺の叫び声を聞いて集まってくれた近所の人たちだった。
木がクッションになったのか、先輩は、俺の呼びかけに答えるぐらい元気で、隣りに座り込んでた。
「なんでお前がいるの?」
と聞かれたけど、
「バカヤロー」
としか答えられなかった。

でも、後々まで一番の謎とされたのは、まったくの部外者だった俺が、自殺未遂をした先輩の横で、捻挫で動けなくなっていたことだったらしい。

462 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/11(木) 23:59:45 ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 9/9

後に住職になった俺は、妹にそのときのことを話し、
「死に急ぐ人間の信号をキャッチしたいから、俺は坊さんになろうと思ったんだよ」
と説明した。
でも、妹は、
「兄貴、キモイ」
と、冷めた対応をしただけだった…。

463 :本当にあった怖い名無し:2008/09/12(金) 00:18:31 ID:3Stb3Z3n0
乙!
そういうきっかけなのね。


464 :本当にあった怖い名無し:2008/09/12(金) 00:30:35 ID:hJiJ5yBtO
乙です!
もう一回読んでから寝ようっと

465 :本当にあった怖い名無し:2008/09/12(金) 00:31:55 ID:J7mgQORkO
兄貴シリーズも期待出来そうですね

466 :本当にあった怖い名無し:2008/09/12(金) 12:45:55 ID:DZzyq8EBO
教授の人ありがとう(^-^)
また楽しみにしてます♪

467 :本当にあった怖い名無し:2008/09/12(金) 16:40:34 ID:u7Ax2lTRO
ウニと赤緑待ち

468 :本当にあった怖い名無し:2008/09/12(金) 17:33:55 ID:HyJCD1AhO
忍まち

469 :本当にあった怖い名無し:2008/09/12(金) 17:40:43 ID:+pik72iTP
俺はウニとマサさんかなー
早く他の話読みたい

470 :本当にあった怖い名無し:2008/09/12(金) 17:51:16 ID:FqOsue+WO
マサさん読みたい

471 :本当にあった怖い名無し:2008/09/12(金) 19:36:56 ID:V3PDpXVt0
教授面白い♪

472 :本当にあった怖い名無し:2008/09/13(土) 12:25:34 ID:7j45vwBhO
ウニさんとマサさんと教授は上手いな
独特の世界観を持ってる

473 :本当にあった怖い名無し:2008/09/13(土) 13:05:56 ID:llsFpQrj0
投下しづれぇスレだな

474 :本当にあった怖い名無し:2008/09/13(土) 17:43:13 ID:hqDy6nc/O
書き手なら黙って投下

冷やかしならカエレ

475 :本当にあった怖い名無し:2008/09/13(土) 19:29:04 ID:0t17f/dSO
マサさんって誰?

476 : ◆BxZntdZHxQ :2008/09/13(土) 23:44:51 ID:GatzUoUy0
二つくらい前のスレの終盤で、身近の複数人の話を投下していいか相談した者です。
少々時間があいてしまい、現状と合致するか不安もありますが、
枯れ木も山のにぎわいということで、スレ汚しお許し下さい。

477 :見えない人1/2 ◆BxZntdZHxQ :2008/09/13(土) 23:47:09 ID:GatzUoUy0
見える人と、見えない人がいる。
霊感の有る無しとか、そう言う事ではない。
「見られる」側の「何か」の話。
だから、見られる人と、見られない人がいる…そう表現するのが正しいかも知れない。

俺はこの間、久し振りに会った従妹からこんな話を聞いた。
彼女は母の妹の娘で、仮に美保と呼ぶ。
美保は彼女の父方の親戚の葬儀で、田舎に帰ったと言う。

かなりの地方のことではあるが、今では葬儀は家ではなく、斎場で行われる。
通夜の後、翌日まで線香を絶やさない為に、
斎場に数人が残って番をするのが通例だった。

斎場の宿泊室には、美保を含むいとこはとこ、合わせて5人ばかりが残った。

美保のいたフロアはエレベーターの正面がホールで、そこに祭壇がある。
左に手洗い、喫煙所があって、その向こうが階段。
右には葬儀の際の受付になるカウンターと簡易なクローク、
その裏側に精進落としの飲食が出来るスペースがあり、
向かいに給湯室と宿泊室、一番奥に非常階段があった。

親類の中でも比較的若い面子だった為、一同は定期的に棺の前を行き来する以外は、
寝むこともなく、雑談したり夜食を取ったり、和やかな時間を過ごしたと言う。
田舎を出てバラバラに就職したり進学したのだから、
全員が顔を合わせる機会は暫くなかった。話す事は沢山ある。

478 :見えない人2/2 ◆BxZntdZHxQ :2008/09/13(土) 23:49:10 ID:GatzUoUy0
何度目かにホールへ行く為に宿泊室を出た時、視界の左端に誰かがいるのが見えた。
美保が振り返ってみると、給湯室の入口にかかった暖簾が、僅かに揺れている。
一緒に部屋を出たもう一人以外は、全員宿泊室にいたと思う。
それでもその時はさして気にも留めずにいたのだが、
手洗いに立つ度、建物の外の自動販売機に飲み物を買いに出た時、
喫煙所に行く時、また線香を替えに行く時、何度も、その度に。

朝までの長い時間、視界の隅に給湯室の入口が入る度に、
何者かの影がそこを出入りするのが見えていたと言う。

最初、美保は(小母さんかな…?)と、亡くなった人を思い浮かべたそうだ。
視界の隅に見える影は、小柄で少し太めな女性の様だったからだ。
しかし、どうやら違う。
知らない誰かの気配がしていた。
美保は何度かその姿を見定めようとしたが、
しっかりと視界に入れようとすると、影は霧散して見えなくなる。
俺にも経験があるが、視界の外れギリギリの部分でしか捉えられない何か、
そんな存在なのだろう。

夜が明けるまで、影は忙しく立ち働いていた様だ。
彼女は今夜もそこにいるのか、もうどこかに行ってしまったのか、
それは俺にも美保にも判らない。

479 :見える人見える人1/3 ◆BxZntdZHxQ :2008/09/13(土) 23:51:11 ID:GatzUoUy0
見える人と、見えない人がいる。
霊感の有る無しとか、そう言う事ではない。
「見られる」側の「何か」の話。
だから、見られる人と、見られない人がいる…そう表現するのが正しいかも知れない。

随分前に、母親の妹、つまり叔母の嫁ぎ先で、人寄せがあった。
一家が転居する前の家だから、10年から昔だ。
夜の9時を回ったくらいだろうか。
酒もつまみも切れて、買い出しに出ると言う話になった。
席上で唯一素面だった大人、要は下戸の俺が行く事になり、
案内にその家の娘の美保が付けられた。
大人、と言ったが、俺も美保も当時は学生。
コンビニも今程煩くなかったのかなぁ、と思う。

目的の店までは歩いて20分近い。
長い坂を延々と上り、右に大きな寺、左に馬を慰霊する碑がある。
石碑の方へ道を折れ、住宅街の中を抜けて幹線道路へ出るコースだ。
美保が言うには、途中にある祠の前を通ると毎回体調が悪くなるので、
この大回りのコースでしか行かれないと言う事だった。

家を出て、件の寺の門前の坂に差し掛かる。
美保は買い物メモに書かれた「6Pチーズ」がツボに入って、一人で延々笑っていた。
俺が何度「ロッピー」と言い直しても、
「ロクピー…」と呟いてはうひゃうひゃとエロい笑いを繰り返す。
馬鹿だ。思い出してみると、酔っ払っていたのかも知れない。
俺はすっかり面倒臭くなって、美保より3メートル先ばかり前をずかずかと歩いていた。

480 :見える人2/3 ◆BxZntdZHxQ :2008/09/13(土) 23:53:10 ID:GatzUoUy0
すると、ちょうど坂の中程あたり、
俺の5、6メートル先の民家の前に、人が立っているのが見えた。

ちょうど門の横に電柱があり、街灯がその人物を照らし出している。
門にも玄関にも灯りはなかったが、充分な光量がある。
閉じた門の前で、男性が背中を丸めて家の方を向いている。
50〜60代のごく普通のおじさんで、髪は白髪混じり、茶色っぽいパンツに、
白いシャツ、ウォームグレーのニットベストを着ている。
昼間なら、住人が庭掃除のついでに門の前を掃いてる、そんな感じだ。

だが、今は夜だ。男性の手には箒もない。

上からの照明で影が落ちた、顔に重ねられた年齢は読み取れるが、表情は判然としない。
俺は何だか収まりの悪い感覚に襲われて、あまりじろじろ見ない様に目を逸らした。
一見マトモに見えるが、変質者だったりしたら厄介だ。こちらは女連れだ。
そうだ、美保は、美保はどうしている?

ととととと、と軽やかな足音がして、女の手が俺の右腕を掴んだ。
左側に徐々に近付いて来る例の男から離れる様に、美保がぐいぐい引っぱっていた。
「美保」
「前見て、でも走らないで。」
俺は訳も判らず美保に手を引かれて、坂を上り切った。

道を折れて幹線道路の灯りが見える頃、黙っていた美保が口を開いた。
「…ああいうの、あんまり見えてるって顔しない方がいいよ。」
え?と俺が聞き返すと、美保は呆れた様に言った。
「男の人、足元見なかったの?」

481 :見える人3/3 ◆BxZntdZHxQ :2008/09/13(土) 23:55:14 ID:GatzUoUy0
美保は髪型やら服装やら、男の姿形を説明した。それは確かに、俺が見た人物と同じだ。
しかし、美保は意味ありげに、男の足を見たかと言う。
確かに、俺は彼の靴を見た記憶がない。
足元を見ていないのだ。

買い物を済ませた帰り道、坂を下り始めると、男性はまだ坂の途中にいた。
俺は美保の話に懐疑的だったし、幽霊に足がないとか、あんまり信じていない。
従妹にぐいぐい引っぱられて道の端を歩きながら、俺はこっそり男の足元を見た。

足はあった。

裸足の足が、地面から離れて10センチ程上で、ぶらぶらと揺れている。

俺は最初に感じた収まりの悪さの正体に気付いて、美保の手をぎゅっと握り返した。
それで彼女も察したらしく、「ね?」と短く応えた。

坂を下り切って、俺はそっと振り返った。
坂の中程の家は見切れていて、男の所在は判らない。

街灯の灯りで、自然な影が付いていた。
肌の色も服の質感も、全て具に見ることが出来た。どう見ても、実在の人間だ。
だけど、生きた人間があんな風にぶら下がっている訳がない。

美保はその後も何度かそこを通ったそうだが、あれ以来その男の姿は見ていないと言う。
家に関係のある誰かだったのか、通りすがりだったのか、それは判らない。
しかし、あれだけハッキリと姿が見える事、それには何か思うところ、
意味があるのかも知れないなぁと、俺は今でも時々考える。

482 : ◆BxZntdZHxQ :2008/09/13(土) 23:57:46 ID:GatzUoUy0
以上です。

>>479でコピペをミスってますが、タイトルは「見える人」1個が正しいですι

いずれまたお邪魔したいと思いますm(_ _)m

483 :本当にあった怖い名無し:2008/09/13(土) 23:58:55 ID:l7N96xZS0

ようやく、見える人、見えない人の意味が分かった。
見える人こええ

484 :本当にあった怖い名無し:2008/09/14(日) 00:02:00 ID:ftOE0w5kO
>>482
乙でしたノシ

見えても見えなくても、何か嫌な感じですよね…ι

485 :本当にあった怖い名無し:2008/09/14(日) 00:06:58 ID:7r2PLX3sO
ご新規さん乙です。

斎場にいついてる人って誰なんだろう…。

486 :本当にあった怖い名無し:2008/09/14(日) 07:26:40 ID:EsrdEXB6O
BxZntdZHxQさん、乙です。
不条理さがほんのり怖いですね。
手慣れた文章も目をひきました。

487 :本当にあった怖い名無し:2008/09/14(日) 18:39:18 ID:mzp68rhV0
>>482乙。
これ本人?

ttp://www39.atwiki.jp/hyakuwa08/?page=%E7%AC%AC%E5%85%AD%E5%8D%81%E4%B8%83%E8%A9%B1

ttp://www39.atwiki.jp/hyakuwa08/?page=%E7%AC%AC%E5%85%AD%E5%8D%81%E4%B9%9D%E8%A9%B1

488 :本当にあった怖い名無し:2008/09/14(日) 19:20:55 ID:EsrdEXB6O
>>487
>>1のまとめサイトに
普通に載ってる…

489 :本当にあった怖い名無し:2008/09/14(日) 23:50:06 ID:B7/RUqO30
>>487
すごい、よくトリップが同じなんて気づいたなー

490 :本当にあった怖い名無し:2008/09/15(月) 00:27:34 ID:2ZgJCNLT0
>>488-489たまたま昨日今日その辺読んでただけなんだ、近い所に固まってたんだよ。
でもまとめに入ってるのか。
大発見した思ってたよ。

491 :本当にあった怖い名無し:2008/09/15(月) 10:44:37 ID:lSnTb92W0
やっぱり同じ作家が新規のように振る舞ってるだけなんだな

492 :本当にあった怖い名無し:2008/09/15(月) 12:04:50 ID:FytpjGDd0
別に新規と偽ってる訳じゃないでしょ
いとこシリーズの続きじゃん

493 :本当にあった怖い名無し:2008/09/15(月) 16:03:57 ID:yZkoT7v3O
新規のように振る舞いたいなら、別のトリにすると思うんだが

494 :本当にあった怖い名無し:2008/09/15(月) 16:31:35 ID:2hAR3I9iO
>>491
こういうボケが
いっちゃん腹立つ

495 :本当にあった怖い名無し:2008/09/15(月) 16:58:37 ID:f1mkoG3R0
でもここはにちゃん

496 :本当にあった怖い名無し:2008/09/15(月) 17:00:15 ID:nxFy7i9K0
そう言えば、コピペ荒しってアク禁になったのかな?だからこんなに平和なのか

497 :本当にあった怖い名無し:2008/09/15(月) 20:56:05 ID:6fUosZ3J0
そう言えば忍とか藤原とかが終わったら入れ替わるように新規が来たよね。
言っちゃ悪いけど、こんなマイナーなスレに待ってましたとばかりに新規があんな連投するほど話をストックしてるのもおかしな話かなーなんて思ったりして。

498 :本当にあった怖い名無し:2008/09/15(月) 20:59:18 ID:f1mkoG3R0
え?忍、終わったの?

499 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/15(月) 22:59:43 ID:1TVHnl7i0
ちょっとお久しぶりです。
忙しくなってしまった。

500 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/15(月) 23:00:19 ID:1TVHnl7i0
甕 1/8

空気の冴え渡る極寒の頃、兄貴が教授を連れて家に来ることになった。
久しぶりの訪問に、父と母は目を輝かせる。
…この人たちは、教授の本性を知らないから(汗)。

玄関先まで迎えに出たのは、母と私。
振る舞いの上品な教授は、最初の訪問から、母を虜にしていたようだ。
「お父さんより魅力的」
と、はるかに老いた教授と較べられる父…立場なし…。

母の誘導で土間から家に上がりこんだ教授は、狭い廊下の脇によけていた私に、
「今度は少し遠出をしよう」
と告げて、先に進んだ。
「蕎麦はもういいですよ」
教授の後ろから、軽口を叩きながらついていこうとした私。

でも、そこで足が固まった。

501 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/15(月) 23:01:13 ID:1TVHnl7i0
甕 2/8

教授の背中に、長い髪の【何か】が張りついてる。のが見える。
裸の女性の後姿にも見えるけど、体型が異様…。細い。とにかく痩せている。骨格標本に皮が張りついているみたい。
肌の色は、死人のように土気色だった。
教授の動きに合わせて、操り人形のごとく、くらくらと揺れる。

「何してんだ?」
最後に入ってきた兄貴が、立ち止まった私の後ろから、能天気な声をかけてくる。
私は兄貴を玄関に押し戻し、母と教授に聞こえない小声で聞いた。
「見えた?兄貴、見えた?」
「は?」
見かけは織田○道みたいなくせに、兄貴は全然気づいてなかったらしい。
でも、
「教授の後ろに、餓鬼みたいな人が…」
と私が教えると、心当たりがあったようで、
「ああ。ついてきたのか」
と、あっさり認めて、さっさと居間に行ってしまった。

厄介なモノを連れてくるのは、教授だけにしてよ〜。

502 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/15(月) 23:02:00 ID:1TVHnl7i0
甕 3/8

居間の座卓に全員が座ったときには、教授の後ろのアレは見えなくなっていた。
それでも、ビクビクしながら酒を注いだりしてたけど、父と兄貴が、例によって羽目を外し始めた頃には気にならなくなった。

「最近はどの辺りを勉強してみえるんですか?」
父が鼻の頭を赤くして、はしゃぐ。
田舎の農家の次男坊だった父には、こういう学問的な話に触れることが、自分のステータスを高めることにもなっているらしい。
「興味があるのは東北ですが、まだお話できるような成果にはなっていませんね」
教授も、この環境の中では、穏やかな笑顔ができるみたい。
「今度は東北行き?」
私が尋ねると、
「広島だよなあ、教授?」
と、すっかり出来上がってる兄貴が口を挟んだ。
「そうだね。そちらが先だ」
教授も相槌を打つ。
母が兄貴に、
「教授に向かってなんですか、その口のききかたは」
と叱った(笑)。

503 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/15(月) 23:03:04 ID:1TVHnl7i0
甕 4/8

「広島というと、まさか原爆ですか?」
父の言葉に、私は内心で(郷土史と戦争は関係ないでしょ)と突っ込んだけど、教授は、
「ええ。それがらみです」
と肯定した。
「原爆で被災した【ある道具】の出所を調べたいと思いまして」
「それが、回りまわって、いま、うちの寺にあるわけ」
兄貴が付け加える。

兄貴の話に因ると、それは小さな甕(かめ)らしい。
水入れとして使ったもののようだけど、いまではひび割れて、保水力を失っている。
兄貴のお義父さん、つまり先代の住職、が存命のときに、教授が寺に持ち込んだものだ。
教授はそれを【呪具】だと紹介した。

「呪いがかかってる…って、ことですか?」
私が確認すると、教授と兄貴が同時に、
「そうだよ」
と、返事をした。
「あの甕は、水を欲しながら得られず、飢えて死んでいった人間の魂がこもってるんだ」
教授は、たぶんサービス精神なんだろうけど、わざと陰にこもった声で続ける。
父も母も、兄貴さえ、その暗い雰囲気を楽しんでいるようだった。

でも、私は笑えない。だって。
…さっきのアレは、じゃあ、その呪具からとり憑いてきたモノなの?

504 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/15(月) 23:04:22 ID:1TVHnl7i0
甕 5/8

その甕は陶器質のものであるらしい。
【質】というのは、陶器としては完成されていない、土器と陶器のあいのこみたいな質感だから、なのだそう。
そうすると、かなり古い年代の物ではないかと勘ぐるけど、教授は、
「古墳時代までは行っていないでしょう。せいぜい遡って、奈良時代」
と答えた。
それでも、学術的には価値が高いんじゃないの?

「僕の実家の蔵にあったものでね」
酒に強い教授は、それでも少し酔ったのか、身の上話を始めた。
「由来も何もわからないんですが、代々、こんな呪いの話が語り継がれているわけです」
「我が家には一代に1人は狂人が生まれるのだとか。そして、こっそりと隠される…つまり、家族の手で葬られるわけですな」
「僕の世代には僕と妹がいるのですが、どう見ても、狂人資質なのは僕だ。だから、僕自身、粛清される自覚があったんです。でも」
そんな話をしている間も笑みを絶やさない教授だったけど、次の言葉は、少し、表情を翳らせてた。
「残念ながら、選ばれたのは僕ではなく、僕の妹でした」

505 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/15(月) 23:05:00 ID:1TVHnl7i0
甕 6/8

話の途中だったけど、私は席を離れた。
見える…。
教授の後ろの【餓鬼】が、教授の肩口にのしかかりながら、顔を上げようとしているのが。
…見たくない。

台所で塞ぎこんでいると、兄貴が顔を覗かせた。
「酒の追加を持ちに来た…って、何やってんの、お前?」
坊さんのくせに何も気づかない兄貴に八つ当たりした。
「教授の後ろにくっついてるあれは何なの?!兄貴、本当に見えてないの?!!」
兄貴は…困ったように首をかしげる。
「うん。まったく見えてない」
「もーっ!!!」
怒りを通り越して、呆れた。

506 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/15(月) 23:06:48 ID:1TVHnl7i0
甕 7/8

「それ、たぶん、教授の妹さん」
兄貴は、私の正面のテーブル席を確保し、ほお杖をついて、話し始めた。
「教授の妹さんは、10代の頃に家を出て独り暮らしを始めたんだ。理由はよくわからないけど」
「家を出てからはほとんど音信不通。教授も、自分の性格に負い目があったもんだから、会いに行ったことはなかったらしい。…つまり、妹さんが家を出た原因が自分にあると思ったんだな」
「ところが、元気にやっていると思った妹さんは、アパートで餓死した。就職先を解雇されて、収入がなかったんだ」

にわかには信じられない話だった。
でも、兄貴の補足で、なんとなく納得はした。
「いまも生活苦は他人事じゃない時代だけど、教授の若い頃は高度経済成長の真っ只中だ。世の中が豊かになっていく一方で、切り捨てらた人たちは、少数ながら、いたんだよ」

まるで贄だな、と思った。
多くの人間が裕福に満たされるための、犠牲…。

507 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/09/15(月) 23:07:56 ID:1TVHnl7i0
甕 8/8

兄貴に促されて席に戻った。
教授の背中には、まだアレがいたけど、誰も気づいていないようだ。
兄貴が、教授に追加の酒を注ぎながら、言う。
「あの甕さあ、ときどき喋るんですよ。中身は聞き取れないんだけど、もんのすごくやかましい」
教授が興味深そうに聞く。
「それは1人の声かね?」
兄貴は笑いながら答える。
「いえいえ。代々の呪いの継承者が集まってるから賑やかですよ」
そして、自信ありげに付け加える。
「そのうち、みんなまとめて成仏させますから、まあ、安心しててください」

その瞬間、教授の妹さんの姿は、淡くなって、消えた。

家族には、
「大口を叩くな」
と馬鹿にされた兄貴だけど、案外頼りになるのかもしれない。
なんて思った。

508 :本当にあった怖い名無し:2008/09/15(月) 23:30:01 ID:bZKPA1ZAO
面白いなあ。乙

509 :本当にあった怖い名無し:2008/09/15(月) 23:45:10 ID:hMoUzoDMO
教授乙
興味深いんだけど、なんだか切ないようなやりきれない気持ちになるなあ…
投下ありがとう。
次のお話も楽しみにしています。

510 :本当にあった怖い名無し:2008/09/16(火) 01:48:14 ID:u+wD92jD0
信じたくないけど今でも餓死する人はいるよね
「おにぎり食べたい」のおじさんとか、貰った米抱えて市役所の植え込みで亡くなったおばさんとか
カーペンターズの妹の方とか

511 :本当にあった怖い名無し:2008/09/16(火) 02:20:01 ID:kr4olceM0
>>510
カーペンターズのカレン・カーペンターズって、拒食症(神経性無食欲症)からくる
合併症による心停止だよ。


512 :本当にあった怖い名無し:2008/09/16(火) 02:21:18 ID:+QMNJWdv0
教授お疲れさま〜
折角だから、お兄さんも一緒に行けたら良いのにねぇ…忙しくて無理だろうけど

513 :本当にあった怖い名無し:2008/09/16(火) 19:59:46 ID:OF0dSmBY0
たまに見える人?が私の方をすごく気にしたように見てる気がして
私何か憑いてんの?って気になる
気のせいかなあ
見える人いたら私がどういう人間か当ててもらえますか?

514 :本当にあった怖い名無し:2008/09/16(火) 20:53:12 ID:bI6RR3ZW0
スレ違い ここ行け
http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/occult/1221424442/


515 :本当にあった怖い名無し:2008/09/17(水) 08:45:33 ID:qDjdLcPc0
初めてこのスレ覗いてみたけど、なに、この褒め殺しばかりのレスは?
「○○さんのおかげでオカ板が好きになりました!」とかありえないっしょ!

516 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/17(水) 09:28:37 ID:TUAZD5IU0
[出会い]
1/12
時刻は11:00、目覚ましの音で目が覚める。
今日の講義は3限と4限だ。今から準備して、大学行って、お昼食べて・・・うん、バッチリだ。
古乃羽でも捕まえてお昼を一緒に食べようと思い、携帯を取り出すが、止めておく。
そうだ、今はきっと「大事な時期」ね。
古乃羽はなんと、雨月君と付き合い出した。
デートをした、なんて話は聞かないけど、電話とメールでよく連絡を取っているらしい。
古乃羽を取られたようでなんだか寂しい気もするが、仕方ない。
ここは一歩引いて、付き合い始めのこの時期を大切に過ごしてもらおう、という私。
なんて健気なんだろう。今度古乃羽に言って、何か奢らせよう。
雨月君、これで彼女を振ろうものなら許さないんだから・・・。

結局家でお昼を済ませて、大学へ向かうことにした。


517 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/17(水) 09:32:04 ID:TUAZD5IU0
2/12
キャンパス内を歩いていると、何人かが挨拶をしてくる。
まだ2年だが、我ながら知り合いが多い。
初対面でも普通に話しかけてしまうので、たまに引かれることもあるが、
大抵の人は打ち解けて、親しくしてくれる。
挨拶しつつ歩いていると、普段ここでは見慣れない人がそこにいた。
子供だ。
小さな女の子が道の脇に立っている。なんでこんなところに・・・?

周りを歩いている人も、なんだろう?と首を傾げるが、そのまま通り過ぎて行ってしまう。
まったく・・・。明らかに場違いで、困っているかも知れないのに。
周りの目は無視して、話し掛けてみることにした。

私「ねぇ、どうしたの?誰か探しているの?」
女の子は自分の胸くらいの背の高さ。
中腰になって話し掛けると、女の子が顔を上げ、目が合った。


518 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/17(水) 09:37:34 ID:TUAZD5IU0
3/12
その瞬間、ハッとした。この子・・・すごく綺麗だ。
ただ可愛いだけじゃなく、美人だ。軽くだがお化粧もしているみたいで、魅力的な顔をしている。

女の子「・・・」
女の子は何も答えず、少し首を傾げ、大きな目でじっとこちらを見つめてくる。
白い肌に真っ白なワンピース。どことなく良い香りもする。
この子は将来、どんな女性になるだろう。末恐ろしいというかなんというか・・・。
今のままでも、そこら辺の男だったらイチコロかもしれない。変な趣味が無くても。

私「私、美加、って言うの。あなたは何ていうお名前?」
しゃがみ込んで女の子より目線を下にする。
女の子は答えてくれた。

女の子「わたし、優理」
私「ゆうりちゃん、ね。可愛いお名前ね」
優理「ありがとう」
ニッコリ微笑んでお礼を言ってくる。
なんて可愛いのだろう。思わず抱きしめたくなる。


519 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/17(水) 09:46:47 ID:TUAZD5IU0
4/12
私「誰かを探しているのかな?それとも、誰かを待っているの?」
優理「・・・・・・」
答えず、ただじっとこちらを見つめてくる。
困ったな・・・あ、そうだ。
私「ゆうりちゃん、上のお名前は何ていうの?」
優理「・・・・・・源川」

みなかわ、か。知り合いには居ない。後で事務にでも行って探してもらおうかな。
本来なら講義の始まる時間だが、今日はパスだ。今はこの子を一人にしておけない。
私「ゆうりちゃん、ここで誰か待っているんじゃなければ、お姉ちゃんとお茶飲みに行かない?」

言ってから気付いた。お茶って・・・。この子くらいの年齢ならジュースで誘うべきだ。
それに何かこれって・・・誘拐とか思われそう。
優理「うん!行くー」

こちらの思いとは関係なく、いい返事が返ってきた。
ラウンジに行こう、と私が手を伸ばすと、彼女は軽く握り返してくれた。
なぜか冷たいイメージがあったが、普通の暖かい、小さな手だった。


520 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/17(水) 09:51:24 ID:TUAZD5IU0
5/12
構内のラウンジに着き、オレンジジュースを2つ買って席に座った。
少女は向かい合って座って、嬉しそうにジュースを飲んでおり、
カバンに常備しているスナック菓子を出したら喜んで食べてくれた。
名前はどんな字を書くのか聞いてみると、「源川 優理」と綺麗な字で私の手帳に書いてくれ、年齢を聞くと、9歳だと教えてくれた。
私もフルネームを教える。
「神尾美加」。上から読んでも下から読んでも、カミオミカ、というと、面白そうに笑ってくれた。

どこかの教授の子供かと思い、聞いてみる。
私「優理ちゃん、パパかママと一緒に来たの?」
優理「・・・優理ね、パパもママもいないの」
うわ、しまった。いきなり失敗だ。
私「あぁ・・・ごめんね。変なこと聞いちゃった」
優理「ううん。平気だよ」

じゃあ、ここには何で来たのだろう?兄か姉でもいるのかな?と思ったが、
これ以上肉親関係で質問するのはどうも気まずい。
優理「お姉ちゃん、あのね・・・」
私「なぁに?おかわり?」
優理「んーん、だいじょうぶ。ありがとう。あのね、優理のお友達になってくれる?」
うーん、なんて可愛いいのだろう。礼儀正しいし、育ちが良いのだろうか。
私「もちろん。私も優理ちゃんのお友達になりたいな」
と言うと、優理ちゃんの顔がパッと明るくなり、最高の笑顔を見せてくれた。


521 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/17(水) 09:56:26 ID:TUAZD5IU0
6/12
優理「嬉しい!よろしくね、お姉ちゃん」
私「こちらこそ、優理ちゃん」
こちらまで笑顔になる。いいなぁ、この子。

優理「お姉ちゃんに、私の一番のお友達、紹介するね」
優理ちゃんはそう言うと、手に持っていた熊のヌイグルミを見せてくれ・・・あれ?
手に・・・持っていたっけ?さっきまで手ぶらだったような・・・?

優理「この子ね、ラットって言うの。男の子よ。挨拶しなさい、ラット」
優理ちゃんはヌイグルミの頭をペコリと下げる。
ラット、って確かネズミだったような気もするけど、まぁいいか。
それと、ラットと聞いて頭に浮かんだフレーズは、何故か「解剖」だった。ヤダヤダ・・・。

私「よろしくね、ラット君。優理ちゃん、可愛いお友達がいるのね」
優理「うん。この子ね、ママがくれたの」
今は亡き母親の、形見のヌイグルミ・・・なんだかウルッときた。
私「そうなんだー。すごく可愛いね」
よく見てみると、確かに可愛い。全長30センチくらいの熊のヌイグルミ。
洋服はお手製だろうか?毛並みもきちんとお手入れがされているようだ。


522 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/17(水) 10:04:43 ID:TUAZD5IU0
7/12
それからしばらく、ラット君のお家のお話や、お国(どこかの王子様らしい)の話となった。
微笑ましい、とはまさにこのことだろうな。

しかしそんな時間を邪魔する2人組がやってきた。

女「きゃーー、なにそれーーーかわいいーーー」
ラウンジに来たカップル。その女性の方がヌイグルミを見つけ、大きな声を出して近づいてきた。
別にそれだけなら構わないのだが、その子はテーブルの上に座ってお菓子を食べていた(設定の)ラット君を勝手に持ち上げ、抱きかかえた。

私「あ、こら、ちょっと・・・」
女「ねぇ〜これ、これ欲しいー買って〜」
相手の男に向かって謎のおねだりをしている。売り物じゃないっての。
男「んー、熊かぁ、いいね〜」
男は優理ちゃんを見つけ、交渉してくる。

男「これ、君のかな?ちょっとさ、売ってくれない?2000円出すよ」
優理「・・・私の大事なお友達なの」
男「じゃ、3000円でどう?子供には大金だろ?あんまりケチるなって、な」
優理「・・・・・・」
先ほどまでニコニコしていた優理ちゃんの顔が曇る。
頭にきた。ガツンと言ってやろうと思い席を立・・・と、そのとき。


523 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/17(水) 10:10:46 ID:TUAZD5IU0
8/12
女「いたっ!」
ヌイグルミを抱えていた女の子が声を上げて、ラット君を床に落としてしまった。
見ると、女の子の手から少し血が滲んでいる。
女「いったぁ〜・・・ちょっとー、針出てたわよ!?」
優理ちゃんは急いで椅子を降り、落ちたラット君を抱きかかえて、また椅子に戻ってくる。
女「検針もしてないの?いらない!そんな不良品」
男「おいおい、これで金取ろうって、信じられねぇな」
ムカッ

私「誰も売るなんて言ってないでしょ?勝手に取り上げて、そんな言い方しないでよ!」
女「何よ、うるさいわね。いいよ、もう、いこ?」
男「ん、あぁ。まったく、詐欺かよ」
一体どういう頭の構造なのか・・・怒りを通り越して、嘆かわしい。
去っていったおバカ2人は放っておいて、優理ちゃんを慰めないと。

私「優理ちゃん、気にしないでね。あんなの・・・」
優理「うん、大丈夫・・・。お姉ちゃん、ありがとう」
優理ちゃんは落とされたラット君の埃を払い、身だしなみを整えていた。
出ていた、という針が気になったが、優理ちゃんは平気みたいだ。

やがて綺麗になったラット君を見つめ、優理ちゃんはしばらく何事か考えているようだったが、突然こう言ってきた。
優理「お姉ちゃん、あのね・・・」
私「なぁに?」
優理「優理のお家に、遊びに来てくれない?」


524 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/17(水) 10:20:05 ID:TUAZD5IU0
9/12
私「え・・・」
いきなりのお誘い。優理ちゃんは私をじっと見つめてくる。
優理「お家に、来て・・・ね?」
見つめてくる・・・なんて綺麗な目だろう。吸い込まれそうだ・・・。
私「・・・うん」
断る理由なんてあるだろうか。こんな可愛い子の誘いを断るなんて。
優理ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。なんて愛くるしい笑顔だろう。

私は席を立ち、手を引かれて歩き出す。手・・・優理ちゃんの手は冷たく、とても大きく感じる。
なんだろうこの感じ・・・。周りの景色が霞んでいき、ぼやけてくる。

子供に手を引かれる女子大生。少しおかしな構図だけど、誰もこちらを見ない。
自分の存在が希薄で、まるでここには居ないかのよう・・・。

ふわふわ、と・・・このまま着いていけば、いいのかな・・・

どこまでも・・・一緒に・・・

・・・・・・

・・・


525 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/17(水) 10:39:04 ID:TUAZD5IU0
10/12
声「美加!」
私「・・・ん」

声「どこにいくの?美加!」
私「・・・ん?」
ハッと気付く、と・・・そこはラウンジを出たところだった。
声の主は・・・古乃羽だ。

私「あれ、古乃羽・・・おはよう」
古乃羽「おはよう、って・・・今何していたの?一人?」
私「ん?一人じゃないよ?ねぇ、優理ちゃん・・・あれ?」
優理ちゃんが居ない。

古乃羽「ゆうりちゃん、って誰?」
私「今まで中で一緒に・・・」
辺りを見渡しても居ない。と、ラウンジの中を見てみる。
さっきまで座っていたテーブルに、ジュースのグラスが2つ。確かに居たんだ。
お手洗いにでも行ったのかな・・・?

古乃羽「もう・・・大丈夫?寝ぼけてない?また講義サボったでしょ」
私「あー・・・バレタ?」
古乃羽「・・・もう。私、4限あるから行くね。美加もちゃんと出ないとダメだよ?」
そうか、もう4限が始まる時間か。
私「あい、古乃羽の仰るとおり、ちゃんと勉学に励みます」
古乃羽「一緒に進級できないと、イヤだからね・・・?」
私「うん。分かった、ごめん。ちゃんと出るよ」


526 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/17(水) 10:48:20 ID:TUAZD5IU0
11/12
がんばってね、と言って古乃羽は次の教室に向かっていった。
えーっと、私はどこだったっけな・・・?頭が少しボーっとする。

優理「お姉ちゃん」
私「わっ・・・、優理ちゃん。どこ行ってたの?」
突然優理ちゃんが現れた。
優理「今の女の人、お姉ちゃんのお友達?」
私「うん、古乃羽って言うの。とーっても良い子よ」
優理「ふーん・・・」
優理ちゃんは古乃羽の後姿を目で追っている。

優理「変わった人だね」
私「ん?そう、分かる?私の昔からの、大好きなお友達よ」
優理「見えるんだ・・・」
私「見える・・・?」
優理「・・・・・・」

優理ちゃんは何か考えているようだ。
優理「お姉ちゃん、これ、あげる」
そう言うと、私の手に何かを渡してくれた。それは小さい、綺麗な石の付いたキーホルダーだった。
優理「それね、翡翠(ヒスイ)って言うの」
私「へぇ・・・翡翠かぁ。綺麗ね。これ、私にくれるの?」
優理「うん。お友達のしるし」
私「ありがとう、大事にするね」
っと、ただ貰うだけじゃ何なので、私も何かあげることにする。


527 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/17(水) 10:59:30 ID:TUAZD5IU0
12/12
確か、あれが・・・カバンを探って・・・あった。
私「じゃあ、優理ちゃんにはこれ、あげるね」
優理「?」
彼女の手にそれを渡す。
中学のときに買った、ペンギンの付いた小さなキーホルダー。
お気に入りでずっと使っていたやつだ。大切に持っていたので、目立った汚れも無い。
優理「わぁ・・・可愛い!」
私「ふふーん、そうでしょう。ペンギンさん、可愛がってあげてね」
優理「ありがとう!ペンギンさん、よろしくね」
優理ちゃんはそう言うと、ニッコリ微笑んだ。

優理「優理、もう帰るね。お姉ちゃん、お勉強するんでしょ?」
私「あ、うん。ごめんね、もっと遊んでいたいんだけど」
優理「ううん。楽しかった。ジュースとお菓子、ごちそうさまでした」
ペコリと頭を下げる。
私「いえいえ。じゃあね、優理ちゃん、またね。ラット君もまた会いましょう」
私は優理ちゃんとラット君に手を振る。
優理「うん。また会いにくるね。バイバイ、お姉ちゃん」

そう言って手を振ると、優理ちゃんは大学の正門の方に駆けていった。
あれ?結局、何をしに来たんだろう・・・
ただ構内に入って来ちゃっただけだったのかな?

ふと腕時計を見ると、4限開始の時間だった。
私は優理ちゃんに貰ったキーホルダーをカバンに入れ、急いで教室に向かった。

一度、正門の方を振り返ってみたが、優理ちゃんの姿はすでに無かった。


528 :本当にあった怖い名無し:2008/09/17(水) 13:47:59 ID:14A44pCiO
赤緑氏、乙。
美加やべーww

529 : ◆DJINKbmZw2 :2008/09/17(水) 16:07:45 ID:4Upx+544O
>>498
事情がありまして暫く投下出来ていませんが、終わってません。
投下出来ない間にまとめておこうと思っています。

530 :本当にあった怖い名無し:2008/09/17(水) 17:45:48 ID:6iNCNZS+0
ウニさんと教授待ち

531 :本当にあった怖い名無し:2008/09/17(水) 18:29:14 ID:WGYvo6Om0
そうやって新規避けしておきゃ先細りだし巧いもんだね

でもまあ>>529忍の人乙

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